関西大学体育会航空部
Kansai University Soaring Club
(1)そもそも「ぐらいだー」って?
「グライダー」なんとなく聞いたことあるって方もいらっしゃるのではないでしょうか。
ハンググライダーとかパラグライダーとか割となじみのある(?)名前にもなってますよね。
でも似たような名前とはいえ、我々が乗る「グライダー」は形もその性質も全く別物なんです。
文字で書かれるよりも見たほうが分かりやすいですよね。
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こんな見た目の飛行機です。(ちなみに上の写真は一人乗りですが、もちろん最初は2人乗りの機体で教官と一緒に練習していくのでご安心を。)
それでは少し真面目にご紹介。我々が搭乗しているのは「上級滑空機」。ピュア・グライダーと呼ばれたりもします。れっきとした航空機です。
ところで、皆さんが飛行機といわれてぱっと思いつくのは多分旅客機でしょう。では、旅客機と滑空機の一番大きな違いは何だと思いますか?
え?大きさ?
んー、確かに大きさも全然違うんですが、もっと根本的なところに違いがあるんです。上の写真を見てもわかるように、グライダーには「エンジンがついていない」のです。
(2)GLIDER→GLIDE→「滑走」→「滑空」
さて、ここまで読んで「それやったら落ちるやん」って思ったそこのあなた。正解です。
グライダーは落ちます。ただしものすごーーーーくゆっくり落ちているのです。
その落ち方たるや毎秒0.7m。エスカレータとかエレベータよりもゆっくりなんです(多分)。
落ちる落ちるといいましたが実ははたから見ればグライダーは前に向かって進んでいるように見えます。それはグライダーがただ落ちているだけでなくグライド、つまり滑空しているからなんですね。
我々が日常的に使う用語として「滑空比」というものがあります。これはグライダーが1m高度を失う間に何m前に進めるかという指標です。そしてこの滑空比、練習機でさえ30程度あるんです。どういうことかというと、1m落ちる間に30m前に進んでる。100m落ちる間に3000m(3km)前に進んでるってことなんです。どうです?驚異的じゃありませんか?先ほども書いたように落ち方はゆっくりなのでほぼほぼ水平飛行してる感覚でものすごく遠くまで行けちゃうんです。
ちなみに上に乗せた写真の機体。Discus bって名前の高性能機(しかも関大の機体!)なんですが、これなんと滑空比45です。100m落ちる間に4.5km進めます。
とんでもないですね。飛んでるけど。...失礼しました。
ともかく、これも実際に見たほうが早いでしょう。
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(3)ウィンチ曳航(えいこう)と航空機曳航
さあ、どんどんグライダーの世界に興味がわいてきたのではないでしょうか?
そして、ここで一つ疑問が生じたことでしょう。
「エンジンなしでどうやって離陸してんねん」と。
離陸方法を解説する前にちょっと寄り道してそもそも飛行機が飛ぶ理由について解説しておきましょう。
飛行機が飛ぶ理由は「翼に前から風が当たって『揚力』が発生するから」です。揚力とは上向きの力を指します。これが重力の大きさを超えたときに初めて飛行機は浮かび上がります(本当はベルヌーイやらコアンダやらクッタやらややこしい話が登場するんですがとてつもなく長くなるので割愛しますね)。
さて本題。旅客機は滑走路でエンジンを唸らして加速し主翼に風を当てることで離陸しますが、エンジンのないグライダーはどうやって加速、上昇するのでしょうか。
これ実は2種類あるんですね。
まずは「ウィンチ曳航」。WTとも表記します(Winch Tow)
ウィンチ曳航はグライダーにワイヤーをつけて、凧揚げのように空に飛ばす方法です。ワイヤーを高速で巻き取ることによって、機体が加速、揚力が発生して機体が離陸します。 | ワイヤーを高速で巻き上げる機械を 「ウィンチ」といいます。 認定を受けた学生が操作します。 空を飛ぶだけでなく、グライダーを空へ飛ばすのも我々で行うんです。 |
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次に「航空機曳航」。ATとも表記します(Aero Tow)
航空機曳航はエンジン付きの航空機でグライダーを引っ張ってもらう方法です。 引っ張る航空機のことを 曳航機(えいこうき)といいます。 | 曳航機は学生ではなく、 免許を持っている教官が運用します。 航空機曳航でどこまでも 高く上がることができます。 |
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超巨大巻き取り機で巻き取ったり、飛行機で引っ張ったり、旅客機では考えられない離陸方法ですよね笑
ちなみにこの引っ張ってもらうロープはレリーズという機構でグライダーに取り付けられ、任意のタイミングでロープを切り離すことができます。切り離しの高度はWTで約500m、ATで約700mにもなります。ATの場合は行こうと思えばもっと高くまで行けますが空域とか燃料とか諸々考慮して600~700mで離脱することが多いです。あ、あとWTは離脱後ロープを巻き取ってくれるのは想像できると思うんですが、実はATの場合も曳航機側に巻き取り機構がついていて、離脱後ロープを巻き取ってくれます。決して下には落としません。
プラスで豆知識。WTの場合の上昇角度ですが、なんと45°です。といってもあんまりピンと来ないですよね。旅客機の上昇角度が10°~15°といえばそのすさまじさが分かるのではないでしょうか。でも実はそこまで怖くはないんです。というのも筆者はジェットコースターが大の苦手なんですがそれでも全然大丈夫なので。
(4)見えない空気の流れを見極める
ところで、空気には流れがあることをご存じでしょうか。気流という呼ばれ方をしたりもします。
では1問。「横から見た気流を図示してみてください。」
たいていの人は一本の横線で地面を描き、それと水平に何本か線を引いて気流を表すでしょう。
大丈夫。正解です。
我々はこの水平方向の気流のことを「風」と呼んでいるわけです。
ですが、この質問をしたときに地面と垂直に線を引く人はなかなかいないのではないでしょうか。
でも実は空気は上下方向にも流れているのでこの線も正解です。
空気の流れは多種多様、その時々の状況で変動します。
ここで言いたいのは、世間一般に気流というと地面に水平な成分が注目されることが多いということです。
ただし、グライダーの世界では水平方向の風と同じくらい垂直方向の気流も重要になってきます。
「上昇気流」という言葉を聞いたことある人もいるのではないでしょうか。
まあこれがとにかく超超超重要になんです。
なぜか?何回も繰り返したようにグライダーにはエンジンがついていないからです。
つまり、離脱した後に自力で高度を上げる術がないということです。そしてここで上昇気流の登場。
そう、グライダーは上昇気流の中に入ることで高度を獲得するのです。空気の力って案外侮れないですね。
トンビが羽ばたかずにぐるぐる回ってるのは割とよく目にする光景ですよね(筆者が田舎暮らしだからかもしれませんが。。。)。あれは旋回して上昇気流の中に居続けることで高度を得てるんです。
これとまったく同じことをグライダーでも行います。
もちろん上昇気流があるなら下降気流もあります。これにグライダーが入るとどんどん高度が落ちていきます。まあ下降気流で真っ逆さまに急降下ということは起こりえないのでご安心を。
最初のほうにグライダーは毎秒0.7m落ちると書きましたがあれは静穏時の話です。この気流に入ると毎秒2mで上がったりもしますし、毎秒3mで落ちたりもします。
とはいえ毎秒3mで落ちてもその間に数十m前に進んでるので感覚としては水平飛行に近いです。急激なG変化もほぼありません。繰り返しますがジェットコースターが無理な筆者でも全然いけてます。
(5)勘違いされがちな着陸
たとえどんなに上昇気流を掴み続けたとしても、いつかは陸上に戻ってこないといけません。
そう、着陸ですね。
これは筆者が友人にグライダーの話をしていた時の事なのですが、やはり鳥人間のイメージが強いのか、
「グライダーって川とか海に降りるん?」
って聞かれました。やっぱりそんな感じしますよね。
ところがどっこい、グライダーは陸から上がって陸に降ります。上の写真見てもらうと分かりますがグライダーにはそのためのタイヤがついてます。
地面が迫ってくる着陸フェーズはやはり上空で飛んでる時よりも緊張しますし難しいですが、これができるようになればソロフライト(教官を乗せずに一人で飛ぶこと)も近いでしょう!
(6)とりあえず乗ってみよう!
このページではグライダーって何?ということに関して書いてきました。
でも正直文章だけじゃわかりにくいですよね。
そんな新入生諸君に朗報!
航空部では4月に「体験搭乗」っていうイベントをやっていまして、そこでは実際にグライダーに乗って空を飛ぶことができます!!!
また時期が来たらSNSやこのホームページにて詳細をお伝えするので少しでも興味が出てきたら是非連絡してきてください!ホームページの最初のページにて各種SNSのリンクやメアドを載せてますので、いずれか好きな方法で連絡していただければ大丈夫です。
それでは、部員一同、新たなグライダーパイロットの入部をお待ちしております。
関西大学体育会航空部 第91代主将 中津北斗